先日月屋スタッフのみんなと、
館内のメンテナンス「油引き大会」をしました。
使用するのはこちら、山中油店さんのベンガラ、柿渋、桐油。
こちらの傷が目立つようになってしまった洋室「三日月」の床に、
まずはベンガラを塗って色をつけます。
ベンガラは赤・茶・黒とあります。
黒は粋で渋いイメージ。赤は妖艶。茶色は無難、落ち着く。
今回は黒ベンガラを柿渋で溶きました。
黒といっても、真っ黒にはなりません。使う量でも色は調整できます。
町家といえば一般的に茶色なんですが、個人的には茶色だけやと明るすぎるかなぁと思うので、錺屋では黒と茶を混ぜて使っています。
割合も濃さも、適当でも問題ありません。塗り重ねても良いので。
塗り直しではそんなに量はつかいませんので、余ってしまうと思いますが、また次回つかっても大丈夫です。(酸化して色が黒くなるけど。)
刷毛でざっと床に置いて、ぞうきんでのばしていきます。
ぞうきん塗りのほうが早いので、おすすめ。
ベンガラの乾燥時間は10分程度でOK。
油を引く前に触ると、色がついてしまいますので、気をつけましょう。
次に油を引いていきます。
町家で使われる建築油で代表的なものは、安価なものから順に、
菜種油、亜麻仁油、桐油、荏油があります。
町家1軒、改修時には一升買いましたけど、お手入れなら、500mlでちょうど良いくらいです。
床でしたら菜種油以外にしましょう。
桐油は速乾性がいちばん高いので、薄く引いてから乾拭きしたら、もう歩けてしまうほど!
天然塗料は体にもやさしい上、ペンキやニスよりも、早く仕上がります。
そして玄関扉は柿渋のみを塗ってから、桐油で。
柿渋は天然の防腐剤。ただ独特の臭いがあるので、
こんな時じゃないと出来ません…
柿渋は使う前によく振ること。
そして開封後半年以内の使用が推奨されています。
こちらも500mlを購入し、使い切るほうがおすすめです。
臭いは油を引くと、マシになりますのでご安心を。
油は艶を出しつつ、木を守ってくれます。
縁側や、廊下、家具類、格子は油引きのみ。
少量の油を乾いたぞうきんで、引いていきます。
そしてもうひとりが乾拭き係。乾拭きすればするほど艶が出ます。
木が喜んでいる声が聞こえてきますよ。
油の匂いはしばらくふわっと残ります。
匂いの好みで選んでもいいかもしれませんね。
亜麻仁油は楽器のお手入れによく使われているので、音楽をやっているかたがいらっしゃると、懐かしまれたり、また「楽器の中にいるみたいな気分」と言われたこともあります。
三日月の床、見違えるようにきれいになりました。
黒ベンガラでも、日がはいるといい茶色にみえます。
格子からの入る西日が、とてもドラマティック。
そして休業に乗じて、今まで踏み切れていなかった動画撮影に精を出しており、
ついに公式Youtubeチャンネルを開設しました。
この日のようすも、ぜひ動画でご覧くださいませ*
チャンネル登録してもらえたら嬉しいです。
御旅宿月屋
女将 涼子